今日は少し昔話をしようかの。早通と割野の境に庚塚という小さな丘があったのじゃが、みんな知らんじゃろう?
へー知らなかった。それはどんな丘だったの?
松、杉、ヒノキの木が1本ずつ植えられておってな、かつては山伏や尼僧(女性のお坊さん)を埋葬した丘で、古く神秘的な雰囲気の場所であったそうな。
なんだかドキドキするわね。かねづかの昔話、詳しく聞きたい。
このかねづかの付近には茂兵茶屋という一軒の茶屋があったらしいんじゃ。当時は交通の要は船じゃったから、この唯一の茶屋はいろいろな情報が集まる場所で、早通集落の発展に寄与したんじゃよ。でははじめようかの。
昔々、かねづかという丘には、歳を重ねた親子のネズミが住んでいた。ある日のこと、親ネズミが風邪を引いてしまい、その体調はますます悪化してしまったという。子ネズミは心配でたまらず、近くの医者から始まり、遠くの鵜ノ子の名医まで尋ねて回ったが、どれも親ネズミの病状はますます悪化するばかりであった。
そんなある日、ひげをぼうぼうに生やし、ボロ布を身にまとった占い師が通りがかった日があった。子ネズミは占い師に、親ネズミの病を癒す方法を問いただしたのだ。
占い師はしばらく黙って親ネズミを見つめ、そしてこう言った。「この病は、鶴の赤足を煎じて飲むことで必ず良くなるだろう。しかしその赤足の鶴は稀で、見つけるのは難しい。神仏に祈れば、救われるかもしれぬ。」そう言って占い師は去っていったという。
その後、子ネズミは日毎夜毎、丘の上に登り鶴が現れるのを祈り続けておった。するとある日、丘から少し離れた八幡堀に一羽の鶴が舞い降りて、餌を探しはじめた。小鼠は喜んで、そっと近寄って見ると、なんとツルは赤足をしておった。
子ネズミはこの好機を逃すまいと、隙を見てガブリと鶴の足に噛みついたのでした。鶴は驚きと衝撃で、空高く舞い上がりました。しかし子ネズミも必死に鶴の足にしがみつき、そのまま一緒に空を舞っていきました。
鶴は飛び続けてしばらくの後、京都の本願寺の屋根に停まりました。その際、ネズミは一心不乱に力を込めて、鶴の赤い足をかじり取ってしまいました。鶴はびっくり仰天し、足を残したまま飛び立ってしまったのです。ネズミはその屋根から降りる方法が見当たらず、しばらく右往左往しておりました。
しばらく経った後、早通村の農夫である権平がちょうどその場を通りかかりました。実は権平はかねづかに畑を所有しており、ネズミの親子とは深い友情を育んでいました。権平はちょうど本願寺へ参拝にやって来ていたところ、屋根の上にネズミがいるのを見て驚いたとのことです。
ネズミは権平にここから降ろしてくれと頼みました。権平はすぐに寺の僧侶にお願いして梯子を用意し、ネズミと赤い足を安全に地面へ降ろしてあげました。その後、ネズミは権平と一緒に寺参りを済ませ、同じ宿に泊まり、更には一緒に越後へ帰国することになります。
その後、ネズミは権平の懐で眠りながら一緒に富山まで戻ってきた。ところが権平は旅のお金が足りなくなってしまうのです。ネズミに事情を話すと、「ご心配なく、私が何とかしましょう」と言って、どこかへ向かって走り出してしまったのです。しばらくして、ネズミは血まみれで戻ってきました。お金は手に入れたものの、天敵の猫に見つかり、激しい傷を負って命からがら逃げ帰ってきたそうです。
翌朝、ネズミと権平は富山を出発し、直江津へ向かう途中で、ネズミの傷がますます悪化し、限界に達しました。「私はもうこの傷では助からない。かねづかに戻ったら、この赤い足を親ネズミに渡して、毎日煎じて飲ませてください」とネズミは権平に頼み、そしてそのまま静かに亡くなってしまいました。
権平は急いで帰国し、かねづかに到着するとすぐに親ネズミの元へ向かい、これまでの経緯を詳しく話しました。そして赤い足を手渡しました。親ネズミは小さなネズミの孝行に感謝の念を抱き、権平に深く感謝の意を伝えました。
それから数日が経過したある夜、権平が一人で眠っていると、夜中に戸をトントンと叩く音が聞こえました。誰が来たのかと起きてみると、親ネズミが姿を現しました。親ネズミは、権平に対するお礼として頭巾を差し出しました。この頭巾には不思議な力が宿っており、動物や虫、魚たちの言葉を理解することができるとのことでした。親ネズミは頭巾を権平に手渡すと、再びお礼の言葉を述べて去っていきました。
翌日、権平は頭巾をかぶってみました。すると、スズメの一群がどこの田んぼの稲穂を食べに行くか話している声が聞こえてきたのです。権平はこの情報を田主に伝え、稲の害を防ぐ手立てを施すことができました。村民たちはその成果に感謝し、権平はその功績によって尊敬されるようになりました。
こうして、権平は頭巾の力を活用して80歳を超えるまで一生を安楽に暮らすようになったと伝えられています。そして同様に、親ネズミも赤い足によって回復し、穏やかな余生を過ごしたとされています。
引用文献:亀田町史より
と、いうことじゃ。おしまい、おしまい。
仙人さん、ありがとう。早通にもこんな昔話があったのね。鶴さんがちょっと可哀想だったけど、親想いのネズミさんだね。
でも権平さんは魔法の頭巾をかぶる前から、ネズミと普通に会話できるという謎。
コホン。細かいことは気にしちゃいかん。庚塚の場所はこのマップで見つけることができるぞ。緑の丘のアイコンじゃよ。ここは以前は上早の坂上家が管理していたんじゃよ。
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